植物生理と生態
パパイヤという植物は知れば知るほど興味が湧く、
非常にユニークな特性を持っています。
栽培していると気付く不思議な現象も知れば納得です。
パパイヤの果実を見ていると気づくことがあります。それは花の形の違いや果実の形の違いです。
花は細長く花粉のあるもの、丸く雌しべの形が広がっているものと、それぞれ株によって異なります。
果実の形状も、丸いものから、パパイヤで見慣れた洋ナシ形、ヘチマの様に細長いのもあります。
きっと品種による違いと思われるかもしれませんが、同じ品種を数本植えた場合でも、株ごとに花や果実の形が違うことがあります。果実形状はパパイヤの性別と環境によって大きく形を変えます。


パパイヤの花

雌性花
雄しべと花粉が無く
柱頭が大きく裂開しているのが特徴。

両性花
雌しべの周りに雄しべがあり、花粉が見えます。

雄性花
長く伸びた花柄に
複数の小さな花をたくさん咲かせます。
パパイヤは元来雌雄別性の植物で、雌性の株に実を着けるためには雄性株(雄花の花粉)が必要です。
しかし種の状態で雌雄の判別がつかない為、過去には1か所に複数苗を植え、花を見て不要な雄株を間引きする生産を行っていました。その生産性の悪さを解消するため両性(両全性)品種が生まれました。
両性品種には雄性は存在せず、両性もしくは雌性となりいずれにも実がなります。
これにより世界のパパイヤ生産の中心は両性品種へと切り替わりました。
当初は区別するためSolo品種と呼ばれ、当時は品種名にもSolo~と表記していました。
正常花と異常花
雌性花


雌花は通常、全長4~5㎝の花をつけます。外観は丸く果実になる子房と一体となっています(上位子房型)。
雌しべは5つの心皮が側面で合成し中空の果実を作ります(断面は星形に)。
子房内壁には多数の胚珠(種になる部分)を見ることが出来ます。
両性花


両性花は通常全長5~6㎝の花をつけます。雌花が丸形なのに対し、細長い蕾が特徴的です。
正常な雄しべの数は5本2組、雌しべの心皮数は5ですが、花芽分化時の気温によって数が変異することが分かっています。
画像左のつぼみは雌しべが無く雄花化(雄性化)しています
両性奇形花


通常5つの心皮が合成して雌しべを形成しますが、この花は心皮が癒合しないまま成長しており、これでは果実はなりません。
花芽分化の際に気温差が極端に大きいとこのような奇形が発生します。発見次第摘果します。

パパイヤを栽培する上で性別が果実にどう影響しているかを知ることは、決してムダではありません。
特に両性品種が主流となって以来、同じ品種の中に雌株と両性株が存在することは知っておかなければなりません。
例えば「同じ品種を3本植える家庭菜園」「同じ品種を100本植える営利栽培農家」がいたとします。いずれの場合も理論上1:2の割合で雌性:両性を混植することとなります。同じ品種なのに性別の差が花形の差、果実形状の差となることを知っておきましょう。
特に両性は温度による影響で変異を起こしやすく、本州栽培では4~5月の低温、8月の高温で形状が乱れることがしばしば起こります。これについては次の項目で詳しく説明しています。

パパイヤの果実

雌性果実
丸型が特徴的、
1本植えの場合は単為結果するため種無しに。



